EROSTIKA BLOG

原宿にあるRockin' Jelly Bean -ロッキンジェリービーン- produced SHOP [EROSTIKA -エロスティカ-] の最新情報をお届けします。(~2008/12月まで)

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FRANK'S COFFEE SHOP

 先週は久しぶりにEROSTY POP! LAや、LAでの販売店であるSURUなどに行って打ち合わせをしてきたんだけど、久々のLAはやっぱりいい。ただ旅行に行こうってのなら他の場所に行くほうがよっぽど楽しいに決まってるんだけど、LAには変なヤツが集まってくるので、それがまた面白い。今回の滞在中に非常に心に残ったエピソードがあって、それはバーバンクの寂れたコーヒーショップでたまたま隣り合わせた男の口から語られたこんな話だった。

 ケンタッキーの田舎町で暮らすジャックは今年で44歳になる。2歳の時に父を亡くし、それからは小さなドーナツ屋を経営する身体の弱い母スーザンと二人暮しだった。  
 子どもの頃からずっと好きだった母スーザンのドーナツ。病弱の母に代わってドーナツ屋を手伝うことも多かった。「やっぱりママ一人じゃダメね。」お店の手伝いをすると、ジャックの為だけにスーザンが特別に作ってくれていたドーナツがあった。刻んだチェリーがたっぷり入ったグレイズドドーナツは、メニューには載っていないジャックの為だけのスペシャルドーナツだった。ジャックはこのドーナツ目当てで毎日欠かさず手伝いをしていた。ジャックがあまりにもこのドーナツに夢中になっていたので、スーザンは「まるで悪魔にとり憑かれたみたいね」と笑いながらこのドーナツをジャックの為に作ってくれていた。丁度その頃、映画「エクソシスト」が世間で流行していた時だった為、ジャックは悪魔に憑かれたリンダ・ブレアの真似をして白目を剥きながらドーナツにかぶりつき、母親を笑わせたりしていた。こんな小さなプレゼントを心から喜んでくれているジャックを見て、スーザンは本当に幸せだと感じていた。 
 思春期を迎えたジャックが、ある日の朝起きていつものように朝食を摂りにスーザンのドーナツ屋へ行くと、もう一人見慣れない男がキッチンにいた。常連客の一人デイブだった。仲睦まじくドーナツつくりをしている二人をガラス越しに呆気に取られたように見ていたら、スーザンはジャックを中に招きいれ「デイブさんよ」といって紹介してくれた。「よろしくジャック」そういって男は手を差し出してきた。どうしてデイブがここにいるのかわからないままジャックは母親から差し出された朝食のプレートに目をやると、いびつな形をしたドーナツが載っていた。「ジャック、キミはそのドーナツが好きらしいね。実は僕も大好きなんだ。今度からママと一緒にこいつを店の看板メニューにしようと思ってね。僕が作ってみたんだけど・・・味はどうかな?」そういって白い歯を光らせて笑うデイブに、ジャックは今まで感じた事のない不安と焦燥感を覚え、マグカップに並々と入ったネスクイックを一口だけ飲んでそのまま学校へ行った。その後、スーザンとデイブはささやかな結婚式を挙げ、デイブはジャックの二人目の父親となった。
 地元のハイスクールに入学したジャックは、当時一世を風靡していたDURAN DURANなどにつばを吐き、やっぱり男はJudas Priestだよなと言ってヘビーメタルにはまり、敬虔なカトリック 教徒の多い田舎町ではすっかり浮いた存在になってしまっていた。鋲付のリストバンドをオラオラとこさえたり、叔父さんからのお下がりの革ジャンを無理やりベストに作り変え、それらを身に着けて学校へ行く毎日だった。そんな毎日を過ごすジャックだったが、スーザンが風邪をこじらせ入院してしまった時はさすがにショックだった。何だかんだ言って母親に甘えて生きてきたジャックは、レザーの上下を着る事によって自尊心を保ちつつ、病院にお見舞いに行くようになった。
 「ママ、無理しちゃだめだよ。僕にとってはこの世でたった一人のファミリーなんだから」そう言って母親の手を握るジャック。鋲が刺さるといけないと思い、病室に入る前にきちんとリストバンドだけは外すジャックの心の優しさを、スーザンはちゃんとわかっていた。「嬉しいわジャック。でもたった一人のファミリーなんて言っちゃだめよ。あなたにはデイブという父親がいるじゃない」 そう言って顔を覗き込む母親の目を、ジャックは見る事ができなかった。あんなヤツ・・・父親なんかじゃない・・・!そう自分自身に強く言い聞かせ、唇を固く結んだまま、ジャックは病室を後にした。
 
 入院している母親に代わって、ハンク・ウィリアムスの流れる店内で毎日店にたっていたデイブ。手つきもドーナツの味ももう堂に入ったものだ。鼻歌まじりにドーナツを揚げてはいるが、やはり妻スーザンの事が気がかりで仕方ない。そんなナーバス気味なデイブにとって、ジャックのイカレた服装は目障り以外の何物でもなかった。
 「ヘイ、ジャック。お前の言う事もわからんでもない。しかしその格好はなんだ?まるでハードゲイじゃないか。」ある朝、ちょうど学校へ向かおうとしていたジャックにそう言って諭そうとする父親いやさデイブ。虫の居所の悪かったジャックとデイブは、すぐさま言い合いになった。「アンタに音楽の何がわかるんだよ!これがオレのスタイルなんだよ!」ジャックは悔しくて仕方なかった。オレから母親を奪い、そして今度は音楽まで奪うのか?そう言いたかったが、興奮しすぎて言葉にならなかった。やり切れない衝動はたまたま手近に置いてあったドーナツとパウダーシュガーへと向かった。「ドーナツなんて甘いもん食えねーんだよ!」そういってデイブの作ってくれたドーナツをこれ見よがしにゴミ箱に捨て、パウダーシュガーの入った容器を勢いに任せてデイブに投げつけて勢いよく店を出て行った。背後から聞こえるガラスの割れる音とデイブの怒号に恐れをなしたジャックは、怖くて後ろを振り返ることができなかった。そのままジャックは家出をした。当ても無く歩き回り、たまたまフリーウェイの入り口で出会ったヒッピーに拾われ、シアトルまで連れて行かれた。ドラッグの味もその時覚えた。童貞もその時捨てた。2週間も連れ回されて帰ってきたら、母親の葬式が行われた後だった。ジャックはそのまま家に帰らずに再び家出をした。大好きだったドーナツはそれ以来一度も口にしていない。  

 男はそこまで一気に話し終えるとコーヒーを一口飲んでから、じっと私を見つめてきた。その視線に耐えられなくなった私は眼をそらし、男に聞いた。で、ジャックはそれからどうなったんですか?男は咳払いを一つしてからこう言った。その後ジャックは町を離れてNYに向かったらしいよ。その後どういう人生を歩んだのかはよくわからない。コメディアンでも目指したかもしれないし、もしかしたらバンドを始めたかもな。
 一体何が言いたいんだこいつは?典型的なアメリカ人のドロップアウト人生なんて世の中に溢れすぎていて、もはや古典としか言いようが無い。そんな話を3時間も黙って聞いているなんて時間の無駄だ。思い切って核心に触れようと思い、聞いてみた。いまのストーリーはあなた自身のものですか?と。すると男はこう言った。いや、これはただの作り話だよ。ただ、私とジャックには二つの共通点があるんだ。一つは思春期に母親をなくしているという事。もう一つは私もJUDAS PRIESTが好きだという事。キミはどうだい?JUDAS PRIESTは好きかい?そう言いながら、彼は私の手を握ってきた。慌てて私は男の手を振り解き、コーヒーショップを後にした。まったく、随分と遠まわしなナンパをしてくるホモ野郎だぜ!


frankscoffee.jpg

 写真のFRANK'S COFFEE SHOPはバーバンクのOlive Ave沿いにあるお店で、第二次大戦後にドイツから移住してきた80歳くらいのお婆ちゃんが現役でウェイトレスをしており、日本人にはやたらと優しいのだ。で、このOlive Aveをしばらく西に行くと映画True Romanceでクラレンスとアラバマが泊まっていたSAFARI INNなんかもあるので是非行ってみるといいだろう。(OX)
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